『昔、FM-7というパソコン、いや、当時はマイコンと呼ばれていたが、とにかくそんな機械があってな。当時中学生だったおじいちゃんは、お年玉やお小遣いを貯めに貯めて、その10万円ほどしたFM-NEW7を買ったんじゃ。
当時はハードディスクどころか、フロッピーすらなくてな。というよりフロッピードライブが10万円、メディアが1枚\2,000-位したから手が出なかったんじゃが。とにかくカセットテープでプログラムのやりとりをしていたんじゃ。1秒間に1600ボーの転送速度で、64KBを転送するのに10分くらいかかったもんでな…。あのころは忍耐強かったのぅ…
とにかくソフトを買うお金もないから必死じゃった。なんせインターネットどころかパソコン通信も出来なかった当時、周りにFM-7持っている人間なんて誰もいない。ソフトは中学生のお小遣いでは買えない。必然的に「マイコンBASICマガジン」や数少ない専門誌「Oh!FM」の誌面に載っていたプログラムを毎日セコセコと打ち込むようになったんじゃ。今思えば暗い中学時代じゃな。
で、本体を買った数ヶ月後、やっとソフトを買えるお金\4,500-位がたまったんじゃ。少ない小遣いをやりくりして、愛読していたBASICマガジンを頼りに、少しでも面白そうなソフトを買おうと必死じゃった。そんな折りに、日本テ●ネットという新規メーカーが、『アメリカントラック』というゲームを発売するとの記事があってな。なんでも映画的な演出を多数盛り込んだ、ゲームセンターも真っ青のレースゲームのように書いてあってな。今思えば広告の煽り記事と雑誌の提灯記事なんじゃが、純朴な少年には分かるはずもなく、そのソフトを買ってしまったのじゃ。FM-7テープ版の「アメリカントラック」を。

…地獄じゃった。
…本気でこんなソフトが世に出ていることが恨めしかったんじゃ。
レースゲームなのにスピード感は皆無。スクロールは16ドット位の超絶的荒さ。雑誌の写真にあったタイトル画面やクレジット画面などテープ版には皆無。敵車に当たると長時間操作不能になることでゲームを成り立たせようとした最低の設計。
全てが純真な少年の夢をうち崩したのじゃ。そりゃ、FM-7という機種には性能的に厳しい内容だったのかもしれんがの。だったら発売なぞせんでほしいものじゃ。少なくともベーマガに載っていた読者投稿のBASICゲームの方が数倍面白かったほどの出来じゃった。 ※
後に日本テレ●ットという会社は、「FINAL ZONE」「無限戦士ヴァリス」などのソフトを乱発し、デモは抜群だがゲームの出来は最低、という評価を不動のモノにするのじゃが。X1持ってる友人に「FINAL ZONE」を買わせて、死ぬほど恨まれたのもこの頃じゃ。何が「ゲーセン以上の重ね合わせ処理(広告内のアオリ)」じゃ、クソが。
そうそう、アメリカントラックの話じゃが、なんとX1版はテープ版でも良い出来じゃったんじゃ。もう同じゲームとは思えないくらいスピード感があってな。ファミコンのロードファイターにも匹敵するほどの良い出来じゃった。X1版を見てしまったためFM-7持ってたことを死ぬほど後悔したものじゃ。
営業上の理由とか、ハードの制約とか、プログラマの未熟とか、そりゃいろいろあるとは思うがのう、純真な子供の夢を崩したという点では万死に値すると当時から思ったモノじゃ。機動刑事ジバンもそういっとるしのう。…何? オタクの話題は分からない? むぅ…
まぁそれはさておき、殺意というモノを初めて抱いたのは、きっとこの頃じゃな。

ちなみにショックを受けた儂は、それから一年近く市販ソフトを買えなかったんじゃ。次に買った「ハイドライド2(テープ版)」は良い出来で満足したモノじゃが。

今でも思う。FM-7版アメリカントラックの製作に関わった者全てに呪いあれ、と。

…ゴッ…ゴフッ』

「うわーっおじいちゃん!」

『…日本●レネットのソフトは買っちゃダメだぞ…』(ガクッ)

「おじいちゃーんっ! おじいちゃんしっかりしてーっ!」








※FM-77以降では処理速度が向上するので、そこそこ楽しいゲームになります。いまだに全方位にヘイトを撒き散らしていて恐縮ですが、幼き日の素直な思い出ですのでご容赦下さい>関係者様
#1 俺とアメリカントラック
   
-あるマイコンゲームが残したトラウマ-
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